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カレー皿の真ん中に、世界観が見える。-Afterglow-

GOURMET|2016.3.31 Photography:Satoru Hirayama
Text:Satomi Nishimura

予想外というスパイスをふりかけたい

自分が立てた計画どおりに物事を進めるのが好きか。もしくは多少、予想外のことがあっても、その状況をあえて楽しみたいか。

もし、あなたが後者であり、さらにスパイスカレーが好きだとしたら。大濠公園近くの「Afterglow(アフターグロー)」に一度は足を運ばなくては。きっと人生を損したことになる。

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「Afterglow」のプロフィールは、れっきとしたカフェだ。カレー屋ではない。店主の入部友登さんは「ウチでいちばん自信をもっておすすめできるのは、鉄板ナポリタンなんですよね」なんて、のたまう。我々は、スパイスカレーが最高にうまい!と聞いてやってきたわけだから、この時点ですでに予想外の状況。肩透かしが空腹へのジャブになり、余計にカレーを食べたくなるのが不思議だ。

「Afterglow」のカレーは、それぞれが際立っている。筆頭メニューの「アフターグローカレー」は、トマトが程よく効いたチキンカレーで、誰にすすめても間違いない味。だが、一度食べると他店のチキンカレーが物足りなくなるほど味わいの層をキャッチできる。

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メニューの2行目に目を移すと「豆腐入り山椒キーマカレー」。麻婆豆腐が脳裏によぎる。3行目は「煮干しカシミールカレー」。出汁とカレー。そりゃあうまいだろうが、カシミールが重なるから混乱してしまう。またしても予想外。カレー好きたちの胸は高鳴っていく。

興味しんしんの我々に、「だって、誰かと同じカレーを作ってもねえ(笑)」と入部さん。もともと「人とかぶることはしない」「流行にはのっからない」と我が道しか歩かないタイプだそうだ。そこで、自分にしか作れないカレーって何だろう?を考えるうちに、豆腐や煮干しという境域に到着したというわけだ。

音楽を聴くように、カレーを食べるという贅沢 

グランドメニューのカレー以外に、日替わりカレーが常時3種類ほど登場するのが「Afterglow」の日常だ。日々、いろんなカレーを考案するうちに、その数はとんでもないことになっている。「2016年の4月、1周年を迎えるまでに100種類のカレーを考えようと意気込んでいたのです。が、すでにその数はクリアしちゃいました」。2016年3月末の現在、その数、160種類という。数年後はどうなるのだ。「Afterglow」のカレーのファンとしては、誇らしいほどに、末恐ろしい。

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「種類はつくっていますが、ひと皿、ひと皿、魂がこもっていますからね」の言葉にもうなずいてしまう。カレーにスプーンを入れると、各カレーが明確な意志や主張を発してくるのだ。なんというか、ロックバンドが我々に「伝えたいこと」をもって楽曲をつくり、熱をもって発表しているのと、どこか重なる。音楽の世界に、まったく同じ曲などないのと一緒で、「Afterglow」のカレーは、ひと皿ずつ違うレシピと、それを作り上げる入部さんのこころを秘めている。

バンドと言えば、音楽をテーマにしたカレーも度々つくっている。「『マキシマムザホルモンカレー』みたいに、好きなバンド名を冠したカレーもありましたね。駄洒落でホルモン(モツ)は入ってないですよ。僕がカレーに表現したいのは、音楽の世界観ですから」と笑う。つまり、「ひりひりするくらい鋭い」「色でたとえたら真っ赤だよね」「そこはかとなくメランコリック」など、音楽を聴いて誰もが一度は覚えたような感覚。それを入部さんは、スパイスのちからでカレーに変換しているのだ。

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入部さんとカレーの話をしていると、その論点がカレーの味やスパイスだけでないのがおもしろい。皿の上に、カレーが奏でる世界観。そこに食べ手も揺さぶられ、「Afterglow」へ通うことになる。

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と、その日、衝撃を受けた内容を思ったままに書き連ねてしまったが、「Afterglow」のカレーが、単なる変わり種に見えてしまうのは不本意だ。ほかの店では見かけない名前、素材、コンセプトだとしても、ひと皿ひと皿は入部さんの頭の中でしっかりとロジカルに構築され、うまい!と目を見張る領域にたどりついている。一見、変わった組み合わせでも、味は散らかることなくまとまっている。冒頭に話した、計画派か、ハプニング派か。もし、前者だと安心して食べていただける。

ちなみにレシピはメモらないそうだ。とんでもないカレーの舌×脳の保有者なのだろうか。

想像を超えるカレーを、プレゼンテーションしてくれる

入部さんとスパイスカレーの出会いは、企業に勤務していた頃、出張先の岐阜で食べたある店のカレーだった。カフェを開店させ、もともとカレーが大好きだったこともあり、週一ぐらいカレーも出してみるか、とスパイスを手に入れたのがはじまり。当時は手探りの状態だったが、突き詰めて研究するとおもしろいほどにうまいカレーが完成した。天性のカレー舌、カレー脳を持ち合わせていたかのかは分からないが、あれよあれよという間に人気が出て、今や「“カレーの”Afterglow」であるのは確かである。

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常連であり、ホームパーティの際は「数種類テイクアウトして味くらべ」といった楽しみ方もしている、オロジオ木村社長。撮影した写真を見れば、「マライア・カリー」と一緒に満面の笑み。ネーミングは、もちろん大ヒット・クリスマスソングで知られるマライア・キャリーにかけたもので(ここはあえての駄洒落です。笑)、シーズンメニューで登場した。2個のハンバーグは、マライアのボリューミーなバストになぞらえて。

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ちなみにハンバーグはちゃんと手作り。こういうところにも手を抜かないのが、大人の上質なふざけ方である。

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最後に。
しつこいようだが「Afterglow」はカレー屋ではない。「定番はトーストメニューで、鉄板ナポリタンが人気で、珈琲も評判で…」といったカフェ・スタイルが、最初の設計図と聞いた。取材後のある日、店を再訪していただいた「たまご(焼)サンド」。こちらも、めちゃくちゃ美味しくて!

カレーもいいが、時にはカフェメニューに浮気する価値があることは、お約束する。

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information

Afterglow(アフターグロウ)
Afterglow
住所:福岡市中央区草香江1-8-25
電話:092-741-3080
営業時間:Lunch 11:30〜14:00
Cafe 14:00〜16:00(15:30L.O.)
Dinner 18:30〜22:00(21:30L.O.)
店休日:木曜日+不定休
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