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博多でも、讃岐でもない、“杵むら式”-うどん杵むら-

GOURMET|2016.5.31 Photography:Satoru Hirayama
Text:Satomi Nishimura

カテゴリにはまらない、ここだけのうどんがある

熱々のすめ(うどん出汁)に浮かぶのは、てろんと腰のない麺。そこにごぼう天や丸天を乗せれば、正統派な「博多うどん」が一丁上がり。はたまた、暴れそうなくらいにぶりんっとしたつるしこの麺を、ぶっかけや生醤油でいただくなら「讃岐うどん」。

食を語るとき、人間は、とかく「◎◎系」だの「◎◎流」だの、カテゴリ分けしたくなるものだ。その方が、思考回路が安定して、落ち着き味わうことができるのだろうか。

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しかし、「うどん杵むら」の一杯はどうだ。
博多にも讃岐にも、属することはない。福岡において、食通に愛される店が多い薬院エリアで、長年のれんを掲げていくことができる独自のおいしさは言わば、“杵むら式”だ。とても「その他」のカテゴリに置くことなどできない。

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細めで、もちもちっと弾力のある麺。主張しすぎないが、柔らかいということもない食感だ。そして、かつおやうるめでとった出汁に本かえしを加えた、福岡にしてはかなり色の濃いうどん出汁。さらに、ほかのうどん屋では見かけない、我が道を行くアレンジや具材。1998年の開業以来、ずっと大切にされている“杵むら式”がここにある。

ごま味噌派か、カレー南蛮派か、それともか

“杵むら式”のうどんの代名詞といえば「ごま味噌うどん」だろう。しっかりきいた出汁にやんわりと味噌で風味をつけ、鶏のつくねとたっぷりのごまを入れる。ふんわり柚子の香りにもくすぐられ、あっさりなのに後を引く。女性にも大人気。「これしか、食べない」という客もいるほどなのだ。聞けば、開業当初は秋冬の限定メニューだったとか。どこか鍋料理に通じるおいしさがあるのだろう。

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そして、もうひとつの看板メニューが「カレー南蛮うどん」。とろみのあるタイプで、カレーは辛くはなくコク深い。南蛮だけにネギも浮かぶ、和テイストだ。追加で玉子を入れられるので「2個おねがい!」と頼む、常連もいる。食べ終わるまで、ずっとアツアツ。冬はお腹の中から温まるし、夏は夏で汗だくになってでも食べたくなる。

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先代からバトンを受け取った、うどんとお品書き

オロジオ・木村社長が「うどん杵むら」に通い出したのは、オロジオをオープンさせた2002年から。その頃は、国体道路と薬院六角をつなぐ上人橋通りに店があり、オロジオとも目と鼻の先だった。

船出したばかりのオロジオをいかに舵取りしていくか。考えながら「うどん杵むら」でうどんを啜る昼休みは、ほっと一息つける唯一の時間だった。木村社長にとって、その時の心持ちとここのうどんはセットのように思い出されるものだろう。ちなみに当時は、「うどん杵むら」先代の店主が店を取り仕切り、現・店主の中山雅弘さんはスタッフとして働いていたそうだ。

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その後、先代が体調を崩されたことから、中山さんが店を受け継ぐことになる。たまたま、一旦店から離れていたタイミングだったのだが、先代から「お前が継がないなら店はたたむから」の言葉をもらい、気持ちを後押しされた。「とにかく私は、先代のうどんが大好きだったんです。この味がなくなるなんて想像もできない。無論、店をなくしてはいけないの一心でした」。

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うどん以外にも、その先代の存在を、いつも感じさせてくれるものが「うどん杵むら」の店内にはあふれている。先代の女将が書いてくれる、お品書きの数々だ。なんとも味わい深く、温かみのある文字は、眺める度にいやされる。

「女将も『気分のいい時にしか、この文字は書けないのよ』なんて言うんですよね」。中山さんにとっては、先代のうどんだけでなく、このお品書きも、なくなるなんて想像できないものなのだ。

「夜もうどん」を楽しまなくては

最近の福岡では、いわゆるうどん居酒屋が人気となっている。「うどん杵むら」はその走りとでもいうべきか、開業当初より夜はもちろん、昼でも「ちょっと一杯」ができる店であった。

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肴のメニューを見ると、こってりうまい「牛すじの煮込み」、そしてうどん出汁をたっぷり吸ってふるふると震える「だし巻き玉子」。「板わさ」や「丸天焼き」「天婦羅」なども揃っている。予約すれば、うどん出汁でいただく「鴨鍋」にもありつける。

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アルコールに目を移せば、ビールや焼酎はもちろん、地酒、ワイン、スパークリングワインまで。

しかし、居酒屋というよりも、もっとオトナな楽しみ方が、この店にはよく似合う。心落ち着け、酒の肴で軽く飲み、最後はうどんで〆る。どちらかといえば、蕎麦屋で飲むような感覚で、さらりとスマートに。夜の楽しみ方も、是非とも“杵むら式”でいっておきたい。

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information

うどん杵むら
うどん杵むら
住所:福岡市中央区薬院2-14-28
電話:092-714-2323
営業時間:平日11:30〜15:00/17:00〜23:00
土日祝日11:30〜22:00
店休日:月曜日
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