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鉢の中の四季、盆栽。-TAKUBON-

LIFESTYLE|2016.11.30 Photography:Satoru Hirayama
Text:Satomi Nishimura

春夏秋冬、季節のうつろいを、葉や枝に映し出す

盆栽の鉢の中には、四季がある。
春には新芽が吹き、夏は葉が濃い影を落とし、広葉樹ならば秋は⾊づき、冬は静かに佇んでいる。

我々は、盆栽をなんとなく“観葉植物”のように捉えがちだが、実はちょっと違う。
⼩さな鉢におさまった盆栽でも、⼤⾃然から抽出された1 本の⽊。だからいつも空調の効いた部屋では居⼼地がわるい。温度や湿度、⽇差しの強さなどに1年のリズムがある場所、四季が感じられる場所で世話をしてはじめて、盆栽の中にも四季がうまれてくる。

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「春夏秋冬を感じられるのが、盆栽のいちばんの魅⼒。⼿をかければかけるほど、いろんな表情を⾒せてくれますし、愛着が湧いてきます。来年もまた、花を咲かせたあの姿を⾒たいな、なんて、いい⽬標もできますしね」。⼈懐っこい笑顔でそう話してくれたのは、空間⽂化研究所 MaNet(ぎゃらりぃ島津)の島津拓哉さん。盆栽ブランド「TAKUBON」を主宰し、⾃分の⼿で盆栽を育てている。

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18歳で苔⽟づくりをスタートし、それからずっと⾃分なりの盆栽を追いかけてきた島津さん。「TAKUBON」の盆栽家として、「ぎゃらりぃ島津」の運営・キュレーターとして、今まで盆栽に興味がなかった⼈にも「盆栽ってなに?」を伝えてきた。

「お部屋の中で育てている盆栽に元気がない。⽔をあげているのに枯れてきた。そんな時は外気に触れさせてあげてほしいですね。盆栽でなくとも、和の植物は四季を感じさせた⽅がしっかりと育ってくれます」。

⽇照時間、気温、⽔などさまざまな⾃然の条件があるが、盆栽にとってもっとも⼤切なのは“光”と“⾵”だと、島津さんは感じている。なので、飲⾷店などにリースで置いている盆栽も1⽇1度は外に出して、光と⾵に当ててもらう。また、室内に置きっぱなしにすることはなく、定期的に⼊れ替えているそうだ。

ちなみに、オロジオ・⽊村社⻑も、島津さんの盆栽ワークショップに通ったことがある。それが縁で、忙しい時は、育てている盆栽を島津さんに預かってもらっているほどだ。

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「オロジオさんのショップ⼊⼝横にも、僕が連れてきた盆栽を飾らせていただいています。時計と盆栽って、普通はあまり考えられない組み合わせでしょう?でも、お客さまは、⽇常とはちがう異空間をオロジオさんに求めているはず。その空間をつくりだす“しつらえ”のひとつに取り⼊れてもらえてうれしいですね」。

⽷島ではじまった盆栽が真ん中の暮らし

島津さんは30歳の節⽬の年に結婚をし、⽷島の古⺠家にすまいを移した。盆栽がよりのびのびと四季の中で育つことのできる暮らしをスタートさせたのだ。⼭があり、海の気配も感じられる場所にある、島津さんの盆栽園兼⾃宅。盆栽たちにとって、それはそれは居⼼地がいい模様で、四季折々に⾒せてくれる表情はまた鮮やかになった。

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「実は僕、最初は家賃3万円のアパートで盆栽を育てていたんですよ。その後、マンションに引っ越しても、ベランダではやはり、思うように育てられなかったんです。でも⽷島に引っ越してからは、盆栽たちがいきいきしている。⾃然の⼒をうけている。ほんとうに引っ越して良かったです」とにこにこ。

そして、⽷島での暮らしを通じて、あらためて盆栽の存在に感謝している。「このひとたち(盆栽)のおかげで、⾃分が⽇々活動できている。ここ、キャナルシティの無印良品での展⽰(2016年6⽉開催)もそうですね。常々、僕は、盆栽の⼒をかりているんだと、思っています。盆栽をやっているから出会う⼈、出会う仕事ばかりなんです。いい気をもらっていますよ」。

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また、島津さんが⽣まれる前からこの世にいる、“⼤先輩”の盆栽もたくさん育てているそうだ。「昭和10年に鉢に植えられ、⼈の⼿を渡ってきて、今、僕がお世話をしている盆栽もあるんです。といっても、僕は盆栽が⽣きるお⼿伝いを少ししているだけ。植物の⼒というか、⽣命⼒というか。そういう不思議な⼒をとても感じますし、またそれを伝えていけたらいいですね」。

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ところで、盆栽という名前の意味をご存知だろうか。「盆」は器を表し、「栽」は植物栽培の栽。すなわち、鉢と植物のふたつで、ひとつのものである。そんな盆栽では、もちろん鉢も⼤切な要素のひとつで、盆栽を語る上で⽋かせないものだ。島津さんもまた、何⼗年も前につくられた古い鉢、若い陶芸家に焼いてもらった新しい鉢など、さまざまな鉢を「盆」として⽤いている。

さらに「これからは⾃分たちで、鉢をつくっていきたいという思いもあります。実は、奥さんの両親が陶芸家なので、僕たちも作陶に対してすんなりと⼊っていけました。⽷島の⽅も今後の展開が楽しみなんです。盆栽園兼ギャラリーとしてどんな場づくりをしていくか。5年後、10年後を思いながら、まずはお庭の木から植えていき、色々と計画を立てている所です」。

そんな話を聞きながら、ふと⽬に⽌まった、芝⽣のようにふわふわとした松の苗⽊。種をまいてまだ1カ⽉ほどの“⾚ちゃん”だという。松林に松ぼっくりを拾いにいき、島津さんが⾃分で種の採集からした、可愛いらしい苗⽊だ。

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「ちゃんとしたカタチある盆栽になるには、あと何年かかることやら…」と島津さんは笑うが、この松と⼀緒に、島津さんの盆栽計画も⼤きく⼤きく育っていってくれるんだろうと感じられた。

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TAKUBON
主宰の島津拓哉は、1984年、福岡生まれ。18歳の時、母の仕事を手伝う中、『苔』の世界に魅せられ、自作苔盆栽[TAKUBON]を展開。陶芸作家や各分野の芸術家とのコラボレーションも行っている。2009年福岡市中央区薬院に「ぎゃらりぃ島津」をオープン。盆栽・花器や花ギフト・古道具などを販売するほか、展示会、企画展、盆栽リース、生け込みなどを手がけ活動中。
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