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ライフスタイルに素晴らしき日本茶の文化を-万 yorozu-

LIFESTYLE|2015.11.30 Photography:Satoru Hirayama
Text:Shizuka Koga

茶と酒を喫する、唯一無二のバー

店の中央に据えられているのは、直径1mほどのブロンズ製の炉。白衣に身を包んだ店主の徳淵さんが、それに対峙し茶を淹れる。洗練された振る舞いは、時に見る者を惹きつけ、時に背景の一部となる。炉を囲う木製のカウンターには、茶と和菓子、酒とアテを喫する客が入り混じり、しっくりと調和して、肩を並べる。

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「お茶」といえば、ペットボトルの緑茶、食後の熱い一杯、茶室でいただく抹茶。そんな選択肢に「万 yorozu」が加わった。会社帰りにスーツのまま、ほろ酔いでも、深夜でも、上等な茶を口に含み、その旨味に悶えてもいいのだ。
基盤としているのは、一期一会の精神でもてなす茶道と煎茶道。それを現代に落とし込み、徳淵さんの切り口で編集したのが「万 yorozu」だ。こんなバーが、他にあるだろうか。

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デザイン空間で、美味しい化学反応を

出迎えてくれるのは白檀の香り。細部にまでデザインが行き届た美しい空間は、背筋が伸びる心地よい緊張感と、肩の力が抜ける寛ぎとをもたらす。手掛けたのは「SIMPLICITY」の緒方 慎一郎氏。和菓子店「HIGASIYA」や紙の器「WASARA」などを世に出した、クリエイティブディレクターだ。

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そのデザインを完成させるのは徳淵さん。白衣で店内にラボラトリーのような雰囲気を漂わせる。「白をまとう意識を大切にしています」。汚れがつくような粗野な動きはできない。いつも白であるために、自然と所作に品がでるのだ。

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一煎目は35℃、二煎目は70℃、三煎目は90℃。茶葉に正確な化学反応をさせ、その魅力を最大限に引き出していく。人肌よりも少し低いくらいに感じる35℃の湯ならば、玉露から旨味成分であるアミノ酸やテアニンを最適に抽出する。旨味・甘味・苦味に香り。茶を十分に味わえる。

感覚が研ぎ澄まされる「夜咄」を見据えて

茶道は時間帯や目的によって、「朝茶事」「正午の茶事」「夜咄(よばなし)」などの茶会がある。「夜咄」では、差し込む月明かりと燭台の光だけを頼りに、懐石料理が振る舞われる。人間は、五感のうちの一つが不自由になると、他の感覚が敏感になるという。うっすらとしか見えないところでは、嗅覚や味覚、聴覚が冴えてくる。非日常的で、幻想的な茶会だ。
徳淵さんの照準にあるのは「夜咄」の世界。「万 yorozu」の繊細なもてなしは、感覚を研ぎ澄ませて味わいたくなる。

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左党も、甘党も、両刀も

一煎目には、練り切りや上生菓子。渋みのある茶には、おはぎや大福。ドライフルーツにバターを挟み込んだスイーツは、茶でもワインでも。「皆さんうんちくではなく、自然と相性がいいものを選ばれますね」と徳淵さん。オロジオ・木村社長は「甘いものが好きなだけなんですよ」とウイスキーに、きなこのおはぎを頬張る。

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「彼はお調子者なんです」と、親しげな木村社長。徳淵さんとは15年来のつきあいだ。茶の道に邁進しながらも、「万 yorozu」での表現に堅苦しさがないのは、徳淵さんの人柄であろう。2015年に迎えた3周年では七五三になぞらえて、千歳飴をふるまうという遊び心もみせた。

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生産者の思いも込めたもてなしを

徳淵さんは、茶葉の産地にも足を運ぶ。時には、朝から生産者と作業を共にする。「倒れそうになりましたよ」と笑うほどくたくたになって、茶葉を知り、作り手の思いを汲む。

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香のように、炉で蒸らした茶葉の香りを味わうところから、四煎、五煎、最後の一滴まで。茶を味わい尽くすことは、”道”として定められた形の通りというよりは、徳淵さんの思いから発するごく自然な行為であろう。「万 yorozu」は伝統文化に乗せて、生産者の思いまでも届ける。

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白折茎茶を煎って、ほうじ茶を作る。これは、生産者を訪ねて得たものの一つだ。青い部分を残した浅煎りはフルーティーで、水分を完全に飛ばした深煎りは香ばしく。「ご自宅にあるテフロン加工のフライパンでも、好みに合わせて煎ることができるんですよ」。しかも、このほうじ茶をウイスキーに漬け込むことで、スモーキーなウイスキーも楽しめるそうだ。試してみたくなる。

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茶室からバーへ、バーから世界へ

ほうじ茶を作るパフォーマンスは、海外でも好評を博している。2014年にパリ、2015年はニューヨークで「万 yorozu」は日本茶のイベントを開催。2016年はロンドンを目論む。紅茶文化のイギリスで、日本茶の文化がどのような化学反応を起こすのか。「スリランカやネパールにも行ってみたいですね」と、茶葉の産地への興味も抱いている。

新しい道を切り開くための気合

そんな徳淵さんが選んだ時計は<PANERAI>。10年前、バーに勤務して経験を積みながら、煎茶道を深めていた時に購入した。「当時としては、かなり思い切った買い物だったんですよ」。これからの自分に喝を入れるための時計は、今でも宝物だという。

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茶の文化は、現代仕様でもっと楽しめる

「万 yorozu」に訪れて、茶道を始めた客もいる。祖母や母が、かつて使っていた茶道具を持て余していたのだが、やってみたくなったというのだ。「茶の文化を繋ぐことに、少しでも貢献できたようで、うれしかったですね」。

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「35℃のお湯でお茶を淹れてみようか」「ほうじ茶を煎るあの道具、カッコイイよね」。日本茶へのこだわりを、より自由に。例えば、自宅でコーヒーをドリップするような感覚で、茶を淹れる時間、喫する時間が豊かになったら面白い。徳淵さんがセレクトした茶葉や、オリジナル茶道具も、今後販売してく予定だ。ライフスタイルに日本茶の文化を組み込むなら、「万 yorozu」がヒントになる。

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information

万 yorozu
万 yorozu
住所:福岡市中央区赤坂2-3-32
電話:092-724-7880
営業時間:15:00~深夜2:00くらいまで
店休日:日曜

万 yorozu
https://www.facebook.com/yorozu109
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